「義経伝説とアイヌ酋長の至宝」…中世武具の謎

大層なお題を付けたが…実は、あながち冗談では無い。
刀剣好きな方は多いので、鎌倉~室町期、山城の「来派」をご存知の方はいらっしゃるだろう。
個人所有ではあるが重文二口が北海道に現存する…
・無銘 伝来国行
・銘 国俊
特に後者は、コシャマインの乱を鎮めた折りに、武田信広蠣崎季繁から拝領した伝説を持つとか…

実際、これは序の口。
論文「北海道留萌市出土の星兜鉢および杏葉残欠について」によると、平安後期~鎌倉後期に使われた、「星兜(鉢に「星」打った兜)」が遺跡から出土。甲冑の部品のみのものもあわせると全道で12例を数える。
それどころか、「蝦夷島奇観五」の中には当別の酋長シリメキシユは甲冑十余領を所有し、中にはボロボロだが平安期の「打掛鎧」まで持っていて、見せて貰った記述が…
余市で出土の「鶴丸文兵庫鎖」に至っては、武将級が直接来ていた可能性を持つ逸品。
拵や刀身も揃っていたら、国宝重文級かも。
何故か、アイヌの酋長は、「ツクナイ」の時に、交渉手打ちの品として贈り物に使った伝承が残される。
酋長らは、これ等武具を所有していたのだ。

当然これ等は、前九年,後三年の役奥州藤原氏、十三湊安東氏の脱出らによる人口流入を示唆させる物と考えられているが…
これらを、博物館や資料館で見た記憶がある方はいらっしゃるだろうか?
恐らくほぼ聞いた事が無い。

北海道史における、鎌倉~戦国期辺りの時代は空白。何も「解らない」。
ここに記載していない物でも、幾つか北海道由来の刀剣,甲冑ら武具の存在を我々は知っている。
探せば恐らくまだまだある。
それも、本州では寺社奉納や再生の為、見る事が出来なくなったり失われたりした時代の物々…北海道だからこそ現存した逸品の数々。

北海道の至宝、見たくないですか?
我々は見たいと思う。
考えるに、見られる可能性は…「ある」。


参考文献…
考古学雑誌 第71巻第1号 「北海道留萌市出土の星兜鉢および杏葉残欠について」
福士廣志 1985年9月