北海道中世史を東北から見るたたき台として−9…懲りずに「中国編」

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2024/02/25/194855

「北海道中世史を東北から見るたたき台として−8…本命?「近畿編(1)(2)」を確認」…

さて、サクサク続けて行こう。

次は「中国編」。

 

鳥取県

・遺跡総数

94

・土葬or火葬

土葬→42

火葬→27 

・特徴ある副葬

古銭→23

ガラス玉(水晶,土玉含む)→3

鏡→5

鉄鍋→4

鉄釘→23

刀剣(刀子含む)→17

陶器,かわらけ→34

漆器→8

仏具(五輪塔,板碑含む)→19

・特徴ある墓制

周溝墓→7

鍋被り→0

石積塚→5

 

島根県

・遺跡総数

40

・土葬or火葬

土葬→22

火葬→13

・特徴ある副葬

古銭→13

ガラス玉(水晶,土玉含む)→4

鏡→3

鉄鍋→1

鉄釘→6

刀剣(刀子含む)→6

陶器,かわらけ→22

漆器→0

仏具(五輪塔,板碑含む)→10

・特徴ある墓制

周溝墓→0

鍋被り→0

石積塚→2

 

岡山県

・遺跡総数

76

・土葬or火葬

土葬→40

火葬→17

・特徴ある副葬

古銭→11

ガラス玉(水晶,土玉含む)→3

鏡→4

鉄鍋→6

鉄釘→22

刀剣(刀子含む)→22

陶器,かわらけ→43

漆器→6

仏具(五輪塔,板碑含む)→10

・特徴ある墓制

周溝墓→0

鍋被り→0

石積塚→0

 

広島県

・遺跡総数

225

・土葬or火葬

土葬→42

火葬→21

・特徴ある副葬

古銭→13

ガラス玉(水晶,土玉含む)→3

鏡→3

鉄鍋→3

鉄釘→21

刀剣(刀子含む)→19

陶器,かわらけ→43

漆器→5

仏具(五輪塔,板碑含む)→15

・特徴ある墓制

周溝墓→0

鍋被り→0

石積塚→21

 

山口県

・遺跡総数

124

・土葬or火葬

土葬→60

火葬→18

・特徴ある副葬

古銭→13

ガラス玉(水晶,土玉含む)→3

鏡→3

鉄鍋→2

鉄釘→21

刀剣(刀子含む)→21

陶器,かわらけ→54

漆器→10

仏具(五輪塔,板碑含む)→14

・特徴ある墓制

周溝墓→0

鍋被り→0

石積塚→5

 

以上である。

では何時も通り…

A,土葬or火葬…

各県毎の比率は、

鳥取…60:40

島根…65:35

岡山…70:30

広島…ほぼ65:35

山口…ほぼ75:25

となる。

これは、「陸路繋がりで都から離れると土層比率が高い」法則(?)発動であろうか?

 

B,特徴ある副葬について…

あまり目立つと思われる物は見当たらないが山口に至り、銅碗(又は似た形状)の物が登場する。

山口市瑠璃光寺跡遺跡」15~16前世紀の「銅製紅皿」、防府市「下右田遺跡」室町期の「金銅製碗」。

瑠璃光寺跡遺跡」は山口県下最も大規模な中世墓域とあり、土葬,火葬双方あり、それこそ「ガラス玉,水晶玉」「錫杖」らも検出している。

周辺の墓相変遷が見える貴重な遺跡とある。

 

C,周溝を含めた墓制変遷…

D,集石塚について…

幾つか特徴的な物があるので纏めて。

方形配石火葬墓が北陸以西で見つかった。

松江市「下がり松遺跡」 室町後半…

「基壇状遺構1基。火葬墓3基。火葬 墓は基壇上から2基、基壇から少し離れた場所で1基を検出。いずれも荼毘跡と考えられる。」

「(筆者註:副葬等は)土師質土器片。五輪塔残欠、瓦等。 瓦には 「□永十□□戌甲七月口」の 紀年銘がある。」

また、それらしいものとしては、

東広島市「別所古墳群」14~15世紀…

「集石遺構7基。うち、3期(筆者註:3基の間違い?)に土壙墓が伴う。また、集石遺構のうち2基から火葬骨が検出され、火葬墓が確認されている。また、集石に混ざり、五輪塔・宝篋印塔の残欠、石仏が検出されている。」

「土師質土器坏・皿、鍋片、羽釜、火鉢片、亀山焼系甕片,備前焼擂鉢片」

収骨有無に言及していないので「それらしい」とした。

とりあえず、西日本にも「方形配石火葬墓」は飛び石的に伝播している様だ。

とは言え、鳥取,島根や特に広島は方形配石を伴う墓自体は多く、その多くは通常の「蔵骨器を伴う方形配石墓」。

上記の様にハッキリ荼毘墓、それらしいものらの年代は解る限りでは14世紀〜室町後期。

さすがに北陸の事例迄は遡るのは難しい様だ。

となれば、その事例の多さも含めると「北陸由来」の蓋然性が高そうである。

また、鳥取の「周溝を伴うもの」と広島の「集石塚」に近いものを2例紹介しよう。

鳥取市「大熊段遺跡」15~16世紀…

「土坑墓4基、墳丘・周溝を伴うもの 1基 (荼毘墓)、周溝を伴うもの1 基(土葬墓)の合計6基。」

「1号墓:焼骨、釘、土師器皿1点、2号墓:骨、釘、土師器皿2点、銭貨12点(繊維で包む)、3号墓:土師器皿2点、4号墓:骨、土師器皿、銭貨6点(竹籠入り)、5号墓:白 磁、土師器皿、6号墓: 夾紵製容器の漆片、銅製座金具、刀子」

広島県高田町「山手1・4号古墓」中~近世…

「基壇状遺構2基。いずれも基壇下から土壙墓を検出し、うち1基は火葬墓の可能性がある。1号墓は五輪塔が基壇上に置かれ、4号墓は墓標の大礫が置かれていた。」

「土師質土器皿・釜片、青磁碗片、五 輪塔残欠。」

鳥取には、

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2024/03/05/111841

「お陰様で㊗50000アクセス、なので地元ネタ…「十字型火葬墓」がある場所はどんなとこ?」…

「磐若台遺跡」の様な「日の字」の様な周溝も検出する模様。

 

E,十字型火葬墓について…

残念ながら十字型を成すものは見当たらない。

主な火葬墓の形は方形又は円形,不定形の土坑+上に集石…が多い様で、T字型やI字型も中国地方には見当たらない。

これも広域ではあるが、地域性か?。

又は宗派の影響だろうか?

 

F,鍋被り墓について…

残念ながら中世では見当たらず。

西には今のところ無し。

 

以上の通りである。

とりあえず、方形配石火葬墓の実績には辿り着く。

残るは九州,沖縄。

土葬:火葬比率はどうか?

方形配石火葬墓や十字型火葬墓に辿り着けるか?

Coming Soon…

 

参考文献∶

 

「中世墓資料集成−中国編−」 中世墓資料集成研究会 2005.3月