ゴールドラッシュとキリシタン13…大眼宗だけではなかった新興宗教、「犬切支丹」

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「ゴールドラッシュとキリシタン」の項としては、少々異質ではあるが、この話も宗教や経済と言う側面を持つので接続しておく。
院内へのフィールドワークらの報告に「大眼宗」ってあるが…
江戸初期、キリシタン弾圧の時期に被る様に発生した事件。
秋田の湯沢(稲庭)で興った新興宗教ってのが今の認識で、仙台藩から来た「大眼」が広めた宗派だが、キリシタンと疑われ捕縛の際暴れた時にキリシタン二名が混じったので混同された…と言うもの。
どうも匿いあっていた様だ。
でも、東北の新興宗教はそれだけじゃない。
これは「今も」岩手の磐井辺り(旧伊達領)では残るという風説があるとの事。


仙台藩主第二十二世宗村の治家記録宝歴四年五月の条り、次のように記載されている。」

「伊達主水家士山崎木ヱ衛左衛門と庄助(上伊沢郡水沢村長吉改め)の二人が犬切支丹と称し浄土真宗一念帰命の法として布流したが、これが大流行し、信ずる者が数郡に及んだ。藩では邪法とこれを睨み、二人を検挙して尋問した所、二人は真宗に間違いなく、決して邪法ではないと強瓣した。そこで藩は、仙台新寺小路真宗正楽寺と北山の称念寺和尚と対決させて訊したところ、浄土真宗てはないことが判明し、各々重罪をもって、磔の刑に処せられた。」
「尚この事件に関する文書一通(自家蔵只野肝入)はこれを語る唯一のものである」

「何故に犬切支丹の名が出たものか、キリスト教を軽蔑する意か、又は仏者や神道家などが他宗排斥の悪意から名付けたものか、何れにせよ切支丹にとっても有難くない名称である。」

「みちのく切支丹」 只野淳 (株)富士クリエイティブハウス 昭和53年9月20日 より引用…


何となく解る。
現代もそうだが、戦乱や飢饉疫病、貧富差ら、江戸初期もだが、宝歴年間だと1751年以降なので、前後の飢饉らで、現岩手はかなり痛め付けられていただろう。
戦乱からの救いを求める為にキリシタンとなったと江戸初期同様、従来宗教で救われないと感じる人々は新興宗教や過激思想に走りがち。
この「犬切支丹」事件もバックボーンを想像する事は難しくはない。
大眼宗も含め、これだけでは無いだろう。
もはや飢饉の続発で地獄絵図さながらの中、それから抜け出そうともがく先祖達の姿が垣間見れる。

ただ、そんな地獄みたいなのを眼の当たりにしながら、ご先祖達は、
黙々と田畑耕し…
魚を捕り…
仕事しながら…
時として笑っていた訳だ。
現代…どうだろう?
ご先祖はそんな時でも笑う事を忘れてはおらず、大地に立ち天を仰ぎ見ていた。

我々は教訓を取り出せているか?


参考文献:
「みちのく切支丹」 只野淳 (株)富士クリエイティブハウス 昭和53年9月20日