木製品の使い方&僅かに残る痕跡「わら細工」…似た様なものは東北にある

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2023/03/18/180921

前項に続き、2点の報告を。

関連項は、

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2021/02/28/080712

ユカンポシC15遺跡の宗教具。

今回はあくまでも「見てくれ重視」である。

直結するかは未知数だが、同様の機能を果たすものがある点のみなら一致するので、「似たようなものなら」と考えて戴きたい。

実は、

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2023/04/04/071045

特別ミッションの際に回った「美郷町歴史民俗資料館」に面白い展示があったので紹介しようと思う。

では2点それぞれで報告する。

 

 

①木製品の使い方…

前項や関連項にある様に、イクパスィやシロシの話である。

出土した斎串には呪文が墨書されるものがあるのは概報。

ただ、形状と宗教具、文字(又は記号)を描くのは共通だが、あまり手に持つイメージはないかも知れない。

で、中世城館の出土品の中に、思い切り手に持つ木製品があったので…

檜扇である。

展示の如く、文字を書いている。

宗教具ではないが、正装らで着用しているのは絵図でよく見るだろう。

檜扇成立の過程で、儀式次第らを木簡に書いて持ち歩く必要らがあった事からこうなったとの説があるとか。

元々文字が書かれていてもおかしくないらしく、現存する檜扇に文字があるものは多数ある様だ。

これを結びつけてみると、

・手に持つ物である。

・文字らが記載されて当然の物。

・正装の際に着用する物なので、祭祀や儀式らの際には持っている。

・檜→アスナロ(ヒバ)…材質が同じ。

こんな共通項が出てくる訳だ。

檜扇に文字が書かれている…ここが解らなかったのでピンと来ていなかった。

同様に「策」ら、手に持つものはある。

これらの派生と考えれば、自然と似たものには辿り着くかも知れない。

まぁ古い民俗系の論文には、そんな説もあるのではないだろうか?

 

②わら細工…

実はここ「美郷町歴史民俗資料館」は収集された古民具が多く展示されており、

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2020/07/17/151607

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2020/08/04/155803

近世には使われていた「金沢石の石のへっつい」が展示されている。

中でも最も力を入れているだろうものが「わら細工」。

近代までこの辺の地域で作り使われたわら細工を展示してある。

これは2017(平成29)年に、わら細工384点と製作用具37点の計421点とで秋田県有形民俗文化財に指定されている。

わら細工は、稲作と同時に発生する茎を縄だけでなく、生活に使う道具として加工したもの。

北海道に関係したものなら、

https://tekkenoyaji.hatenablog.com/entry/2021/03/04/224207

三国通覧図説にある、

「下品ノ夷人、獣皮ヲ着タル姿也、被リタル物は本邦ノ雪帽子ヲ用ヒ自国ニテも制スルム

中下品ノ者共ノ帯ル、脇差ヲ、タシロ或ハマキリト云、皆本邦ヨリ渡スム、出刃包丁ノ類ニシテ悉酒田打也」

の「雪帽子」もわら細工。

ではこの中から2つ紹介する。

 

②−a…数の記録…

パネル表示を。

「結縄  藁の計算機。藁などに結び目を作り、数量などを表すもの。沖縄で20世紀初頭まで、普通に用いられていた。当館にあるものは、地域の方が作成した複製。」

確か、アイノ文化にも植物に結び目をつけていき数量を示すものがあったと聞いたが、別に北海道固有のものではない様だ。

北海道、秋田県沖縄県にあるなら、恐らく日本中あるだろう。

秋田の場合は、手っ取り早く藁や縄を使ってやれば良いだけ。

山村は識字率は下がる。

だが、紙と文字以外の記録方法がないと、年貢らの数量確認の間違いがあってはまずい。

当然、代替方法はある訳だ。

この辺は前項にある「木帳面」らと同じ事。

 

②−b…女性用生理帯…

まずは…

イラクサの繊維であまれた一〜二メートルくらいの細長いヒモである。

アイヌの女性は、初潮のある年ごろ、一五〜一六歳になると、口のまわりや手、足に入れずみをするがそのころ、このウブソルを与えられる。

これには、タブーの考え方が非常に強く、母方の女性−母・祖母・あるいは姉妹から同一型式のものが伝えられるのであり、ウブソルによりアイヌの母系をたどることができる。」

 

アイヌの墓」  藤本英夫  日本経済新聞社  昭和39.9.10  より引用…

 

これも固有の文化的に書かれているのだが…

こちらの展示。

着用する下着や帯により長さは変化するであろうし、当然ながら手元にある植物繊維を使う事になる。

形の違いは当然、母から教わる事になるので母系継承は極当たり前であるし、男性が目にする事がないのも極当然。

筆者は男性なので、これ以上詳しくは知らないが、まぁさもあらん。

まぁ、これを固有文化と言うかどうかは読んで戴いた方の解釈に任せよう。

実際、ここ以外で生理帯の展示を見た事は無い。

タブーなのは同じ事。

 

如何であろうか?

今回は「見てくれ重視」。

これ以上、深掘りはしていないので悪しからず。

ただ、これだけはハッキリしている。

似たものは東北に幾らでもある。

当たり前なのだ。

元々蝦夷と言われたのは東北。

それを片っ端からアイノなぞと直訳すれば、武家ら以外の民衆習俗も全て含まなければならない。

同じ様なもんがあって当然。

地域柄の差しか出てくるハズもなし。

地域属性を与えるなら別だがね。

そりゃそうだ。

層別の最初は「外観」から。

 

筆者の眼の前にはこれらがある。

全く特別なものでは…ない。

 

 

 

 

参考文献:

 

アイヌの墓」  藤本英夫  日本経済新聞社  昭和39.9.10